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by watarajp

「冷戦後の日本と世界経済」庄野寿著

この間、中央銀行な役割、世界におけるIMFの役割やグローバリズムといったあたりに関心がいっているのだが、この本もその延長線上で読んだ。

時は、90年代初頭である。
そのころの不況に対する考えから、ひとつの提言として書かれた本である。
冷戦に勝利した自由主義国家群。にもかかわらず、アメリカ、イギリスは不況の真っ只中。
日本もバブルがはじけた。東ドイツを飲み込んだドイツも余裕がない。失業率も上がってきている。
全世界的にこれかの経済を立て直すか、そういった時期である。アメリカにおいてクリントン政権が成立し、増税をまさにおこない財政を立て直し、第一次ITバブルにまだ向かう前の話である。

その中、筆者は、第二次大戦後の世界経済のあり方を概括的にまとめている。
パックスアメリカーナがいかに成立したのか?そこでできた国際的協調システム、その中で、発展途上国と呼ばれたラテンアメリカやアフリカにおいて経済発展が行われなかったこと。
事実を淡々と論じている感じだ。
とりわけ80年代の分析は興味深い。。レーガノミックスといわれたマネタリストやサプライサイドの経済といった経済思想についてあまり論じず、IMFを中心とした世界経済分析を現実として分析しているのだから、ちょっと意外である。
ケインズの提唱によるIMF体制が、実際は、彼の意思とは裏腹に、中途半端な形での資金供給になり、かつ、その政策自身が、必ずしも途上国のためになっていないのだから、不思議である。

少し引用しよう。
そこで1941年にケインズは、国際清算同盟ー一種の世界レベルの中央銀行ーの構想を創りあげた。彼の構想は、ブレトン・ウッズ体制をつくるたたき台となったのである。
会議に出席した44カ国は、大量の失業、懲罰的関税の賦課、商品相場の暴落をともなう1930年代の恐慌の再発を防止するため、世界全体規模の国際機関を創建しようとした。難航した交渉の結果、国際通貨基金(IMF)、世界銀行が設立された。構造と機能において、IMFはケインズの構想とは全くかけ離れたものとなったが、その基本的な設立目的は、文言上ではケインズ構想に似たものであった。


そして冷戦後の今日的問題に対し、次のように言うのである。

国際社会は新時代の入り口に来ている。世界的な力強い経済成長こそが、冷戦後世界において我々が直面している種々の難問を解決するための前提条件となるのである。

世界的な経済思潮を実現するためには、ケインズが1944年に新たな国際通貨制度を創る際に提案した通貨創造機能を忘れるべきではないであろう。

こういった考えから、ヨーロッパの動き(その後、現在のユーロへ結実したもの)においてECUレポートを参考にメリットデメリット、ヨーロッパにおける(その当時の)展望を分析し、筆者は世界中央銀行構想を提唱するのである。

このことは、ECU(当時)によるヨーロッパがどうなるか、そのことの先に世界通貨を見ているのは、筆者の立場が、かなり楽観的とはおもうものの面白い主張である。

つい最近読んだヴェルナーの著作では、全く別の観点から、FBRによる世界的な通貨統合が展望(セントラルバンカーの意思)として論じられていた。時同じくして、全く別の観点から、語られているのが興味深い。

話を戻そう。
実際、ヨーロッパにおける通貨統合こそは、パックスアメリカーナの終焉の時代におけるヨーロッパ的対応であって、これを、経済ブロックと考えるか、関税同盟と考えるか、世界統合の流れととるか、はたまた、米国中心体制の補完ととるべきかそれはわからないし、人の立場によるのであろう。

しかし、筆者の発する理念には、私は共感を覚える。
それは、ケインズが、大戦後世界の安定のために、新古典派に代表される「神の見えざる手」により経済をゆだねる発想(それによる失業や恐慌、社会的不安定がおきざるをえないこと)を批判し、国家が時に市場に対し介入し需要を喚起し、失業をへらし、不況から速やかに脱却するそういった理念を受け継ぎ、国際的に同様なことを考えたのだから。
ちなみに、ケインズは、政策論を論じるときは、とても生き生きしていて説得力を持つ。
パッションあふれる行動する理論家です。全集の中の説得論集はとりわけその傾向が強いです。

最後に筆者の言を聞こう。

今や、世界経済は、冷戦後時代が始まったところもあり、南北問題、環境問題をかかえた世界同時不況に直面している。こうした状況下にあって、今我々がすべきことは、インターナショナルベースでケインズ主義を実行することである。新時代への舵取りの知恵は、歴史をさかのぼる中に隠れている。”温故知新”こそまさに時代を拓くキーワードなのである

私自身は、ケインズ主義が新自由主義がどうとかが言いたいわけでない。

実際、情報通信分野の国家的投資はその後のアメリカ経済の復活を支えたのは紛れもない事実であろうし、アメリカ的イデオロギー、世界の常識、グローバルスタンダードの名の下、アメリカは、復活した。
アメリカの現実が、ロビー活動やホワイトハウスの政策、あるいはFRBの財政、金融政策によって(規制緩和にしても、すれば得な会社、損な会社いろいろある、政策によって利害の実現は可能なわけだ。そしてとてつもない政治献金が裏で動くのだ)、そしてその政策が実経済に与えるインパクトは、とてつもなく大きい。


問題は、持続的成長、失業をなくすこと。極度のインフレを避けること。南北問題、格差社会といった不平等が減少し、環境悪化がこれ以上進まないこと。
そういったことが、いかなる政策によって可能か??それが知りたいだけでなのある。

by watarajp | 2006-04-14 20:19 | 読書